天然ガス
[Wikipedia|▼Menu]
地面から湧き出ている天然ガス天然ガスの採掘現場

天然ガス(てんねんガス)とは、メタンを主成分とし、エタンプロパンなどを含む化石燃料の一種[1]

気体燃料は天然ガス、石炭系ガス(石炭ガス水性ガス、発生炉ガス、高炉ガスなど)、石油系ガス(オイルガス)に大別される[1]。天然ガスはこれらの中でも代表的な気体燃料で、10?15m3のガスをガソリン捕集装置にかけたとき、1リットル程度のガソリンを採取できるものを湿性ガス(wet gas)、採取できないものを乾性ガス(dry gas)という[1]
用途
燃料

燃焼させて調理暖房風呂沸かしなどの熱源として使われる。日本では都市ガス用として利用される[2]

石炭石油に比べて燃焼させた時に、大気汚染物質(窒素酸化物硫黄酸化物など)や温室効果ガス二酸化炭素)の排出が少ない[3]ため、火力発電所においても中心的な燃料となっている[4]

その他、天然ガス自動車や、天然ガス動力船[5]が実用化されている。
化学品原料

メタノールアンモニアアセチレンなどの製造に使われる[6]。日本国内の天然ガス田では、ヨウ素が重要な副産物として採取されている[7]
取引

日本では需要量に比べて国内産がごく僅かであるため、歴史的にLNG輸入に依存してきた。1969年のアラスカからの輸入を皮切りに、東南アジア(ブルネイマレーシアインドネシア)、オーストラリア中東アブダビカタールオマーン)、ロシアサハリン)などから輸入している。当時の火力発電の主力燃料が原油重油であったことから、経済性比較が容易となるように原油に連動した価格で取引された。また、契約期間は10年以上の長期で、仕向け地も制限される契約条件が一般であった。これは、長期安定的に燃料を確保したい需要家側の事情のみならず、LNG生産者側の事情も要因となる。

新規LNG生産プロジェクトの立ち上げに際しては、ガス田開発、LNG生産設備建設、LNGタンカー建造等の多額の投資を必要とし、長期での投資回収が必要となる。この為、生産者側は長期販売をすることで一定の収益を確保し、投資決定を行うことが望ましかった。更にプロジェクト・ファイナンスを組成する為にも長期安定収益確保は必要であったという背景もある。この為、転売を認めるとLNGタンカーの航海日数が変動し、デリバリー計画に影響を及ぼしかねないことから、転売が認められない条件が一般的であった。

2010年以降になると、スポット取引が行われるようになった。更にシェール革命を起因として米国で多くのLNGプロジェクトが立ち上がり、地理的に欧州アジアのいずれにも届け得ることから、LNGの仕向け地を変更することが一般的となり始めた。また、日本の公正取引委員会がLNGの仕向け地が変更できないことを問題視し、調査を実施したことも仕向け地変更可能な契約条件を促す動きにつながっている[8][9]

東京商品取引所などが設立した「JAPAN OTC EXCHANGE株式会社」では、LNGの店頭取引が行われていた。その後2022年4月、東京商品取引所においてLNGの先物の取引が開始された[10]

また、天然ガスの輸出国から輸入先へのパイプライン敷設ルートの選定や、供給量・価格のコンロールには、外交・地政学的な要因が絡むことも多い。「ロシア・ウクライナガス紛争」を参照
天然ガス

地下から産出する状態の「天然ガス」について以下に述べる。液化したものは後半部の「液化天然ガス」を参照のこと。
起源

天然ガスの起源は炭素の同位体比(13C/14C)、ヘリウムの同位体比(3He/4He)、窒素(N)・アルゴン(Ar)比[11]などを分析することで判別できると考えられており、成因は下記のように大別される[12][13]。なお、分類に関しては諸説あり、「生物起源ガス」と「非生物起源ガス」に分類する考え方[14]などもある。
有機成因

熱分解性ガス
堆積物中の有機物(原油、石炭、泥質堆積物中に含まれる有機溶媒に溶けない有機物)の熱分解を起源とする。別名:ウェットガス[12]エタンプロパンブタンペンタンを多く含有する。
バクテリアガス
石炭[15]、堆積物中の有機物の低温での生物分解による。名前とは裏腹に直接メタン生成を行うのはバクテリアではなく古細菌である[16]。別名:ドライガス[12]メタンを主成分とし、他の成分は少ない。有機物を分解するメタン菌によるCO2還元反応が起源である[16]
無機成因[17]
流紋岩等の火山岩体[18]や海底枕状溶岩中に存在し、マントル中の無機炭素を起源とする[19]
組成

天然ガスにはメタン・エタン・プロパン・ブタン、そしてペンタン以上の炭素化合物が含まれ(天然ガスコンデンセート)、産出する場所によってその割合は少しずつ異なる。

産地による成分の違いの例(単位は mol/100mol)産地メタンエタンプロパンブタンペンタン窒素
ケナイ(アラスカ)99.810.070.000.000.000.12
ルムート(ブルネイ)89.835.892.921.300.040.02
ダス(アブダビ)82.0715.861.860.130.000.05

天然ガスに含まれる主な不純物として、窒素二酸化炭素硫黄酸化物硫化水素水銀などを含む[20]。例外的に北アメリカ産・アルジェリア産の天然ガスには 1 - 7 mol/100molものヘリウムが含まれており、世界の数少ないヘリウムの供給源となっている[21]
特性

揮発性が高く、常温では急速に蒸発する性質を持つ。主成分のメタンエタンが空気よりも軽いため、大気中に拡散しやすい。この点では、常温で空気より重く低い場所に滞留しやすいプロパンブタンガスに比べれば、人が扱う上での危険性は低い。またプロパンと同様、メタンやエタンも無臭であり、不純物を取り除いた天然ガスもまた無臭である。しかし無臭のまま天然ガスを用いることはガス漏れの際に気が付かず爆発の直接的な原因となりうる[注 1]。このためコスト面の問題や燃焼生成物による影響を忌避するために着臭剤を添加しない工業用原料を除き、天然ガスを燃料用ガスとして一般に提供する場合は有機硫黄化合物をはじめとした悪臭成分を意図的に混入(付臭)させ、ガス漏れを人間の嗅覚により察知しやすくしている。
物性

天然ガスに含まれる主な物性を以下に示す[20]

名称メタンエタンプロパンブタン
(ノルマル/イソ)
分子式CH4C2H6C3H8C4H10


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:102 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef